新しい(良い)習慣を作るのにはどれくらい時間がかかりますか?

アジャイル移行に着手すると、初めによく聞かれる質問は、「これにはどのくらいの時間がかかりますか?」です。
それぞれ移行するにあたっては、新しく習慣化したり、既存の習慣を変えたりする必要があります。 それぞれの新しい習慣(そしておそらく、その過程で古い習慣を破る)には、努力と時間が必要です。

European Journal of Social Psychologyの 研究で 、新しい習慣を形成するのに18〜254日かかることが分かりました。 差は14倍です。 ですから、長さを見るのではなく、新しい習慣を形成する際の要素、実践内容、落とし穴を見てみましょう。

要素

既存の悪しき習慣

チームや組織に、すでに悪しき習慣が根付いている場合、彼らは悪い習慣をリセットしなければならず、その時間が、新しく望ましい行動習慣を学ぶのにかかる時間に追加されます。 経営哲学者のジム・ローンが述べたように、「誰かが間違った道を突き進んでいる場合、その人は加速するための動機を必要としない。その人に必要なのは、彼を好転させるための教育である。」

悪い習慣をリセットすることは、習慣作りのプロセスの中で最も時間のかかることもあります。オレゴン大学の エリオット・バークマン は、「代替行動なしで習慣的なことをやめるよりも、何か新しいことを始める方がはるかに簡単だ」と述べました。 早期のトレーニングとコーチングは、悪い習慣を作る出すことなく、新しいチームを形成するのに役立ちます。

既存の悪しき習慣は、多くの場合、環境に起因します。 これらの要素を変えるか、新しい行動習慣に結びつける必要があります。 対処しなければ、これらの要素は絶えず人を古い習慣に向かわせます。 ここでもコーチングが役に立ちます。 コーチは、変える必要のある行動習慣だけでなく、それを増強する要素にも注意します。

チーム

職場の習慣について考える時、新しい行動習慣を始める必要がある個人についてだけでなく、チームとしての人々について考えます。 このことは、チームのダイナミクスに応じて、新しい習慣の形成に役立つこともあれば、それを妨げることもあります。 チームは、新しい結果への道のりにおいて支え合い、助け合う場合もあれば、別々にいて、個々人が別々に、反復可能な習慣作りの努力を必要とすることもある。

複雑さ

いくつかのスキル、ひいては習慣は、他のものよりも難しい。 チームがテスト自動化を作る習慣を身につけるには、進捗管理ツールの残り時間を更新するような作業よりも、トレーニングや努力、練習が必要でしょう。

スケール

新しい習慣を形成する時間は、習熟度の基準をどこに設定するかによって異なります。 マルコム・グラッドウェルは、著書 『天才! 成功する人々の法則』の中で、一流のスキルを磨くには1万時間の正しい練習が必要だと言っています。 一方、 『たいていのことは20時間で習得できる~忙しい人のための超速スキル獲得術』で、ジョシュ・カウフマンは、20時間、意図的に練習すれば(世界クラスではないが)習熟できると言います。 私たちが達成したい習熟度のレベルが、そこにたどり着くまでの時間に影響します。

会社の環境

会社の現在の企業文化、官僚主義、およびインセンティブ構造は、望ましい習慣を奨励したり、あからさまに阻止したりしないかもしれません。 チームのメンバーは、変更に必要な決定を下すことができますか? 彼らには 実験し、失敗し、学ぶ能力がありますか? メンバー個人とチームの目標が、顧客およびビジネス上の目標と一致していますか?

たとえば、ある企業では、積極的な自習トレーニング要件があり、それがパフォーマンスレビューに大きな影響を与えました。 多くの場合、要件は従業員が行っていた作業とは関係がありませんでした。 チームメンバーは、一丸となって製品をリリースする代わりに、無関係の自己啓発本を読むことにかなりの時間を費やしました。

プラクティス

変化する理由を知る

サイモン・シネック は、「人々は、あなたのしていることを買うわけではない。あなたがそれをしている理由を買う」と言います。 チームが、自分たちが変化する理由を分からず、経営陣も顧客も、そのことを気にかけない場合、変化など起こりません。 役職が開発者、 スクラムマスター、ディレクターのいずれであっても、なぜこの変化を追求するのか、なぜそうすれば人々の生活がより良くなるのか、というところから始める必要があります。

メトリクス

ピーター・ドラッカーは、「測定しなければ、改善することはできない」と言いました。 メトリクスは、チーム(または部門や会社) が進捗状況を把握し、結果を評価する方法を試す時に役立ちます。 メトリクスには、自動化のコードカバレッジ、顧客から報告されたバグ、さらには従業員のエンゲージメントや顧客満足度の調査などが含まれる場合があります。

注意点:グッドハートの法則を思い出してください。 「尺度が目標になってしまうと、その尺度は適正でなくなる」 目標は、上記のような核となる理由うえに設定し続けなければならない。 メトリクスは、そこにたどり着きそうかどうかを知るのに役立ちます。

目的のある練習

グラッドウェルの1万時間の法則論は、1993年に行われたバイオリニストの研究に基づいています。 2019年の研究では、これらの研究を再現しようとしました。 2019年の研究では、バイオリニストを、次の3つの熟練度グループに分けました:低い、中程度、高い、 熟練度の低いグループは確かに中程度と高いグループよりも練習が少なかったが、熟練度の高いグループは、実際には中程度のグループよりも 練習量が少なかった

練習の質には、さまざまなレベルがあります。 適切な練習をたくさんしても最良の結果は得られず、質の高い練習は短時間で結果を得ることができます。

意図的な練習をするには、複雑な行動習慣とシステムを、ごく小さなピースに分割する必要があります。 プロのバイオリニストの練習を聴いたら、あなたが聞いているものの多くが演奏レベルではないことに驚くかもしれません。

フランスのバイオリニスト、エスター・アブラミは、ヴィヴァルディの「四季(夏)」を練習している動画を投稿しました。 彼女が、ショートスケールのパッセージを、ゆっくりと繰り返し、ダブルストップ(一度に2本の弦)を演奏してイントネーションを確認しているのが分かります。 彼女は同じ4つの音を何度も弾いて、弦の交差を正確にし、一つ一つのシフトを分離させていました。 彼女はまた、動画を作った理由の1つに、自分の練習を分析して、練習を効率化するためであると述べました。

同様に、チームは望ましい習慣を身につけるための実践を容易にする小さなアクションを特定する必要があります。 スワーミングを改善したいと思っていたあるチームは、1日3回のスタンドアップミーティングをすることに決め、次の2〜3時間の間にどのようにお互いを助け合えるかということに焦点を当てました。 コラボレーションのレベルが自律的で自然だ(つまり、習慣化した) と感じたとき、彼らはデイリースクラムを1回するかたちに戻りました。

コントロールと影響の違いを理解する

いくつかの習慣は、部門または会社レベルで環境という障壁にぶつかります。 チームがコントロール、あるいは変えられないものがあるかもしれません。 しかし、障害は単に、コントロールできるかできないかの二者択一に収まるものではありません。 影響がグレーの領域があります。

誰がその問題を管理しているのか知ってる? あなたが持っているメトリクスを彼らに見せることができる? または、プロトタイプを作れる? コントロールではなく影響力について考えることで、チームが新しく創造的な解決策を見つけることができる場合があります。

小さく始めて勝利を祝う

多くの場合、習慣が習慣にならないのは、そのアクションには多大なエネルギーが必要なため、人々が、始めるというハードルを乗り越えられないからです。 新しい習慣を作るにあたっては、完璧である必要はありません。以前より少しだけうまくやればいいだけです。 BJ・フォッグ博士は、『習慣超大全――スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』で、どんなに小さくても、勝利を祝うことを提案しています。 お祝いは、ウェブカメラ越しのハイタッチくらいシンプルなもので良いのです。

助ける環境を整える

BJ・フォッグはまた、習慣を他のプロセスにひも付けることで、その習慣を実行するよう環境からリマインドさせるとも話しています。 例えば、デンタルフロスをする人は約30%しかいません。 1日2回 歯を磨く人の2倍以上です。 フォッグは、歯を磨くことをデンタルフロスとひも付けることを勧めています。

これをチームに当てはめて、チームがテスト化の作成を改善しようとしていると想像してください。 それをピアレビューのチェックリストに含めて、作成、実行、および合格したテストの妥当性を検証することができます。 そうでない場合、テストが作成され、実行され、合格するまで、そのタスクはピアレビューの承認を得られません。 あるいは、チェックインが原因でコードカバレッジが低下した場合に、ソース・コントロールがチェックインを許可しないようにするというひも付けをすることもできます。 選択肢は複数あることが多いので、自分のチームに一番合うものを見つけましょう。

落とし穴

アクションなしの新たな行動習慣を評価する

ある土地に古い別荘を持っているのに、新しい別荘に引っ越すとは言えません。 この例をいくつか次に示します。
•フェイクアジャイル:機能不全の古い習慣に、より良い響きの新しい名前を付ける。 行動習慣は何も変えていないのに、不満を「アジャイル」のせいにし始めます。
• ダブルワークアジャイル:デイリースクラムと、以前からやっているステータスミーティングをやろう。 作業が増えることは、より効率的になることではありません。
•古い行動習慣を正当化する:「ここXYZ社ではですね…」または「XYZ社のやり方は…」

将来に投資していない

新しい行動習慣と機能には、多くの場合、時間とリソースが必要です。 それらに投資しないことは、深刻に短期的な展望を意味し、革新と効率を妨げます。 コストではなく投資であるアクションの例をいくつか次に示します。
• テスト自動化
• 適切な従業員トレーニング
• サービスの分離を可能にするアーキテクチャの変更
• 技術的負債の修正
•機能横断型のチーム編成

専門的な移行サポートがない

フットボールのコーチはチームのためにボールを拾って走ってくれはしません。 しかし、彼らはメンタリングをし、導き、責任を負ってくれます。 同様に、専門的なアジャイルコーチングは、組織が新しい行動習慣に移行する際のメンタリング、指導、および組織が説明責任を維持するよう助けてくれます。

良い習慣を受け入れ、プロセスに投資する

悪い習慣をリセットするのは費用がかかります。 良い習慣から始めることは、コストセンターではなく、有益な投資です。 この経験は、望ましい習慣を作るための時間を短縮してくれます。

正しく始めたい、または移行への正しい道を歩みたい場合は、私たちがお手伝いします。詳細は 今すぐお問い合わせください

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