スクラムのメトリクスとしてベロシティを悪用するのをやめよう

ジェイソン・ガードナー(編)

スクラムのメトリクスとしてベロシティを悪用するのをやめよう

スクラムフレームワークは、複雑なプロジェクトにアプローチする際に、チームのベロシティと効率を確実に向上させてくれます。 しかし、この方法の重要な意味合いを注意深く考慮しないと、組織はすぐに最終目標を見失い始めるでしょう。 ベロシティは「包括的な」尺度ではなく、とりわけ、以前のイテレーションや予測と比較して、チームの生産性を評価することができる1つの方法と捉える必要があります。 この記事では、異なるチームが手掛ける類似のプロジェクトを比較するのにベロシティが理想的な指標ではない理由を探り、チームの成功に向けた進捗状況をより包括的に把握するために実行できる戦略について説明します。

スクラムにおいて比較可能なメトリクスとしてのベロシティの導入

スクラムが、プロジェクト管理アプローチとしてますますの広がりをみせていくと、チームの生産性と効率を測るための効果的なメトリクスを見つける必要が出てきました。 ベロシティとは、スクラムチームが1回のスプリントで完了した作業量の尺度。 このメトリクスは、チームが特定の期間にどれだけの納品をしているかを明確に把握できるため、近年注目を集めています。 ベロシティの良さは、同じチームのスプリント間の比較を容易にする能力です。 このメトリクスによって、生産性と進捗状況の標準的で一貫した測定が可能なるので、スクラムチームにとっての貴重なツールになります。

スクラムのメトリクスとしてベロシティを使用することの長所

スクラムのメトリクスとしてのベロシティには、チームの生産性と効率を向上させることができる複数の利点があります。 最も重要な利点の1つは、チームが時間の経過に伴う進捗状況を測定できることです。 ベロシティを把握することで、チームは特定のスプリントで達成できる作業量に関する分析情報を得ることができます。 これは、現実的な目標を設定し、将来の計画を立てるのに役立ちます。

測定ツールとしてベロシティに依存することの短所

めまぐるしく動くこの世界では、時間はとても重要です。 企業は製品やサービスを効率的に生産するよう努めており、そのためにベロシティは広く受け入れられた測定指標になっています。 ただし、生産性を測定するためにベロシティにのみに依存することにはリスクを伴う可能性があります。 スピードだけに焦点を当てると、製品やサービスの品質低下につながる可能性があります。 また、従業員に対して、良いパフォーマンスではなく、迅速なパフォーマンスを求め、大きなプレッシャーにさらすという、熾烈な職場文化を生むことにもなります。 そのため、ベロシティは生産性を向上させるのに役立つツールですが、企業は製品の品質と従業員の士気も考慮することが重要です。 ベロシティをスタンドアロンのメトリクスとしてではなく、全体像を測るために他の測定指標と組み合わせて使用 する必要があります。

また、異なるチームを比較するためにベロシティを使用しないことも重要です。 ベロシティは、チーム毎に調整された基準に基づいています。 したがって、あるチームのベロシティが20で、別のチームのベロシティが40であっても、一方のチームがもう一方のチームよりも優れているとか、劣っていることにはなりません。 無理矢理に比較しようとすると、各チームがスケールを変更することになります。 ベロシティは、比較ツールとしてではなく、実験の予測と評価に活用すべきです。

ベロシティは価値の尺度でもなく、どれだけ達成されたかを測るものです。 よりたくさん納品することは、必ずしもより良い結果を意味するという考えには陥らないでください。 私たちが本当に求めているのはカスタマーバリューであり、それを、より多くの労力ではなく、より少ない労力で提供できたほうが良いと思いませんか?

スクラム手法においてベロシティを正しく活用するためのヒント

では、ベロシティを責任を持って活用するにはどうすればいいでしょうか? 1つの選択肢としては、ベロシティの数値だけに依存せずに、その傾向を分析することです。 特に、ベロシティがチーム毎に調整されているものだと理解していない、チーム外の人々とコミュニケーションをとる場合は、ベロシティの傾向を示すグラフを、数値なしで見せるといいでしょう。

また、チームはスプリントでのオーバーコミットを防ぐためにベロシティを使うべきでしょう。 しばしばチームは、変更の検証をする前に、改善のための方法を考案し、もっと多くのことにコミットしようとします。 彼らは本質的に、まだ見ぬ利益をあてにしているのです。 最初に変更を実行し、その結果を測定してから、新しく実証されたベロシティに基づいてコミットすることをお勧めします。

それ以外のアプローチとして、単一の日付ではなく日付範囲で予測を立てるというものがあります。 予測が遠ざかるほど、分散の可能性が高くなります。 最大と最小のベロシティ値を使用して、その範囲を決定できます。

たとえば、200 ストーリー ポイントと推定される主要なマイルストーンをいつ達成できるかを予測するように依頼されたチームを例にとってみましょう。 平均ベロシティは40ストーリー ポイントです。 それらの最大実証ベロシティは50であり、最小ベロシティは30です。 このチームがそのマイルストーンを達成できる最も早い値は、200/50、あるいは4スプリント(2か月)です。 しかし、そのためには、すべてのスプリントで、すべてがうまくいく必要があります。 予想される納品は約200/40、または5スプリント(2.5か月)になります。 スプリントで、すべてがうまく行かなかった場合、200/30、つまり7スプリント(3.5か月)後の納品になります。 したがって、このチームが2か月で納品できる確率は約5%、2.5か月で納品できる確率は約80%、3.5か月で納品できる確率は95% です。 このように一定の範囲で期間を伝えることは、実証された納品に基づいた情報を伝えることであると同時に、将来の予測につきものの不確実性を伝えることでもあるのです。 また、ステークホルダーが意味のある決定を下すのに十分な精度であることも多いです。

もう一つの重要なテクニックとして、チーム構成が変化したときにベロシティを再測定することです。 チームの人員を追加する、または減らすと(1人抜け、代わりに別の人員が入った場合でも)、チームのベロシティは変化します。 チームの新しいベロシティを測定し、その値を使って予測を更新することが重要です。

まとめ

今回の記事で見てきたように、ベロシティは、スクラムで作業する場合の納品を分析する際に非常に便利なメトリクスです。 ただし、スクラムチームの成功を正確に測定するために使用される唯一の基準ではありません。 よくある落とし穴を理解し、ベロシティを賢く使うことで、チームは、より構造化された結論を導き出すことができます。 ベロシティに焦点を当てたメトリクスに精通し、常に使い慣れた計算に頼ることなく、スクラム環境で戦略を立てて評価する能力を向上させるには、 プラチナムエッジのCSMまたはCSPO講座の受講をお勧めします。. これらのスキルに精通していると、スクラム手法を使ったプロジェクト管理に対するアプローチを計画するのに役立ちます。

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