アジャイル評価は、組織がアジャイルの価値観や原則においてどのような状態かを知るためには不可欠です。 アジャイル評価では、ビジネスにおけるアジリティという観点から、組織のプロジェクト、および組織のポートフォリオ、従業員、業務の管理状況を確認します。
従来、アジャイル評価は、現行チームの成熟度と、アジャイル手法が適切に実行されているかどうかを確認するために用いられていました。 今日のアジャイル評価は、リスクの軽減をしながら生き残っていくために必要不可欠なものとなっています。 組織は、システム統合サービスに莫大な費用を注ぎ込んだ後、コンサルタントが「60%完了した」と言っていたたことが、実際には進行中の作業の束であり、出荷する具体的なものが何もないことを学んでいます。
アジャイル評価を正しく実行すれば、前向きな変化のための有意義な会話を促すきっかけを作るため、多大な影響を与えてくれる可能性があります。 ここでは、アジャイル評価への投資を最大限に活用するのに役立つガイドラインをいくつか紹介します。
アジャイル評価の準備
アジャイル評価から最大限の効果を生むには、十分な準備が必要です。 準備には以下のことが含まれます:
- 十分なコミュニケーション(評価前と評価中の両方)
- 調査的面接
- 行動観察
- アーティファクトとツールの徹底的な見直し
コミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーション
評価を成功させるには、十分なコミュニケーションが不可欠です。 まず、組織のリーダーたちに、アジャイル評価が行われるという心構えをしてもらいます。 次に、彼らと、評価の範囲と目的を共有します。 アジャイル評価によって、アジャイルの成熟度ロードマップを伴うプロジェクトまたは組織の移行戦略が支える主要な改善機会を明らかにするつもりであることを理解してもらいます。 最後に、達成したいビジネス上のメリットについて説明します。
経験豊富なアジャイルコーチが監査役を務め、次の3つの側面で評価に取り組むことを説明しましょう。
- 面接と観察
- 結果をまとめる
- フィードバックを集める
アジャイル コーチは、評価の結果をまとめ、評価の最後にアジャイル成熟度ロードマップで改善策についての提言を概説し、それについてディスカッションします。 ディスカッションでは、観察内容やコーチの提言の根拠、その提言を実行に移すための手順を検討していきます。
評価の期間、アプローチ、意図、期待される結果について、十分なコミュニケーションを通じて期待値を設定することは、関係者全員の助けになります。
面接
評価の範囲と幅に応じて、評価に役立つと思われる主要な人物を特定しておくと良いでしょう。 アジャイル コーチは、製品の納品を可能にする組織のリーダーと、スクラムチームの潜在的なパイロットメンバーの面接をします。 面接対象者は、経営陣や上層部の職員、スーパーバイザー、ステークホルダー、エンジニア、スクラムマスター、プロダクトオーナー、品質保証やアーキテクチャ、リリースなどの責任者、DevOp、セキュリティ、そしてITまたは製品開発組織以外の部門(人事、営業、マーケティング、運用、財務、法務など)の代表者を含める必要があります。ただし、面接を組む前に、アジャイルコーチと人選について話し合うことをお勧めします。
評価の参加者が安心できるように気を配り、全面的に評価に取り組むことが、より有益な結果につながることを理解してもらえるように心がけましょう。 面接は匿名で行われるため、参加者には正直に発言することを促しましょう。
観察
アジャイルコーチは、組織内の交流も観察しておくと良いでしょう。 たとえば次のような、組織の現状を示す良い指標となるようなプロジェクトや組織の会議があれば観察対象にしたいところです:
- プランニング・セッション
- 要件収集セッション
- ステークホルダーに対する製品デモンストレーション
- 変更諮問委員会(CAB)会議
- 開発、品質保証、アーキテクチャ、インフラストラクチャ・チームの会議
- リーダー格スタッフの会議
- エグゼクティブレベルの会議
アジャイルコーチが、引き継ぎ、典型的なディスカッション、組織の長所と短所を観察できるようにしましょう。
アーティファクトの見直し
評価で見直しをするための、重要なアーティファクトとツール:
- システム開発ライフサイクル (SDLC) のコピー
- PMO のガイドラインと基準
- 企業ポリシーと手順
- 新入社員研修
- 昇給または業績管理のガイドライン
- ボーナスまたはその他の報酬方針
- リリースおよび変更管理方針
- 既存のバックログとメトリクス
- テスト自動化の方針
- 製品キット
- 技術的負債リスト
- ステータスレポート
- 障害、問題、リスクのログ
- 開発に使用するツール
- 現状が分かるその他の文書
アジャイルコーチが会社の電子メール、連絡先情報、および組織の予定表にアクセスできれば、より、やりやすくなるでしょう。
評価期間中
評価中は多くのことを観察しますが、質問事項もたくさん出てきます。 アジャイルコーチは、会議やその日の流れを、自分の質問で乱さないように注意します。 アジャイルコーチの目標は、評価見直しの最中に、予期しなかったことが起きないようにすることなので、透明性が重要になります。
それぞれの人材と交流
評価の期間中、アジャイルコーチが出会いたいのは、新しいアジャイルの役割を引き受けるための情熱、能力、適性を持っていると自認する人々です。 ほとんどの評価において重要な成果だと言えることは、 アジャイル移行チーム (ATT)の設立です。 ATTを構成する適切な人材については、評価レビューの最中に話し合えることが理想ですが、それが常に可能であるとは限りません。 ATTの目的は、アジャイル移行をサポートし、パイロットチームが潜在能力を最大限に発揮するための環境を構築し、評価中に作成されたアジャイル成熟度ロードマップを自ら実行することです。 また、パイロット チームのメンバーになり得る人材探しもします。 パイロットチームは、組織全体とATTがビジネスにおけるアジリティを進めるために必要なことを学べるようサポートします。 パイロット チームは、アジャイルの基礎を学びながら、低リスクのプロジェクトや製品でクイックウィンを達成します。
アジャイル成熟度ロードマップ
評価で得られる重要な成果物として、アジャイル成熟度ロードマップがあります。 組織の指導者たちと共に作成したロードマップには、弾みをつけるためのクイックウィンの概説があり、その後に、より長期的な目標と目的が続きます。 ロードマップは、評価レビューの主要なディスカッション・トピックであり、現状と将来的なアジャイル状態の間の溝を埋めるものです。
ロードマップの良さは、変更が可能なことですので、組織のアジリティを向上させるアイデアのバックログと見なす必要があることを忘れないでください。 ロードマップの順序は、組織の変革に従って変わる可能性があります。 ATTは、組織の改善機会のバックログを継続的に改善しながら、アジリティの実践において模範を示します。
ロードマップには、組織のトレーニング(研修)計画が含まれていると思ってください。プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者、ステークホルダー、リーダーには トレーニング が必要です。 組織は、ATTとパイロットのチームメンバーに、初期トレーニングを指示するべきです。 トレーニングは変革に勢いをつけるためには不可欠なものです。
評価の終了
評価は、評価結果に関して経営陣や指導的立場の人材(将来のATTチームメンバーを含む)と見直しをし、話し合いをすることで幕を閉じます。
見直しでは、長所、課題、および提言について説明します。 アジャイル コーチは、特定された課題、提言内容の根拠、どのように課題に対処するかを、全員が理解できるよう、丁寧に解説します。 また、アジャイルコーチは、潜在的な障害、障壁、落とし穴についても見直していきます。
最後に、評価レビューでは、最初に実行すべき事項について説明しますが、通常その内容には、ATTチームとパイロットチームがアジャイル成熟度ロードマップを実行するのを手助けするため、アジャイルコーチを少なくとも1人配属することが含まれます。 ほとんどの組織が、 経験豊富なアジャイルコーチによる専門的なアジャイル移行サポートなしで、これらの変更を実行するのは困難です。 アジャイル思考に移行するチームに対するサポート(専門的なコーチング)の欠如は、ほとんどの組織が経験する 最大の落とし穴 の1つです(26ページ)。
まとめ
評価が非常に重要なのは、アジャイル移行への投資が、期待どおりの結果をもたらすかどうかを知ることができるからです。 評価の成功は、効果的なコミュニケーション、オープンであること、誠実であること、耳を傾ける意欲、そして変化したいという熱意にかかっています。 アジャイル評価を活用して有意義な会話を促し、組織の改善に役立てましょう。 あなたの会社も顧客も、それを高く評価することになるでしょう。
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